芸人さんにも俳優の方にも文才のある方はいらっしゃいます。アイドルが小説を書くことだってアリでしょう。加藤シゲアキさん、若さをそのまま小説の世界で表現されています。高校生による料理バトル。私はかつて流行った「料理の鉄人」というテレビ番組を思い出しながら、読ませていただきました。
オルタネートという架空のマッチングアプリが、タイトルにもなっている通りキーポイント。高校生の微妙なお年頃心理を繊細に描いています。アプリを100%信用するタイプ、遊びとして利用するタイプ、敬遠するタイプがオムニパス風に縦走していて、うまい構成ですね(なんだか上から目線かなあ)。クッキングバトルのシーンは緊迫感が伝わる絶妙の筆致で、妬ましいくらい「じょうずだなあ」と感心してしまいました。
高校生の料理と言えば三重県には《まごの店》があります。これまたテレビドラマにもなった高校生レストランのモデル校・相可高校が県内にあるのは、なんだか誇らしいですね。
高校生時代、私はあまりいい思い出がないので、こんな青春を満喫しているストーリーには、素直に感情移入しにくいところがあります。部活とか文化祭とか、みんなはティーンエイジを存分に楽しむものなんですね。すみません。受験勉強に占有された暗い時代だったので、高校球児とかインターハイの出場者とか、私には眩しすぎるんです。
ま、自分のことはともかく。タレント本とは大きく一線を画した、まっとうな文学作品です。堂々の吉川栄治文学新人賞受賞作ですから間違いありません。これからも注目していきたい、羨ましい才能です。