職人の手仕事の素晴らしさを読む「京の大工棟梁と七人の職人衆」

家が建っていく工程を見るのが大好きです。ニッカボッカを履いた大工さんたちが、材木を肩に担いで運んだり、鋸や鉋で芸術的に切ったり削ったりする様子、イイ音をたてて釘を打ち込んでいく金槌の動きをを見ていると、憧れと称賛の気持ちが湧きおこります。

自分が不器用なのは、よおく自覚しているので、屋根のちょっとした修理や、小さい棚の取り付けなどをしてもらうと、尊敬の念を送る私の目はハート型になっているはずです。

笠井一子さんの「京の大工棟梁と七人の職人衆」。これはもう生き字引のような名著ですね。数寄屋大工、左官、表具師、錺師、石工、畳師、簾師、庭師。皆さんが京言葉でしゃべっているモノづくりへの心意気が、真摯に伝わってきて、思わず正座で読まねばと、姿勢を正したほどでした。

道具へのこだわり、材料への厳しい視線。いやもう、素晴らしいです。

古民家と言われる日本の古い家が、どうかこれからも壊されず、どうにかうまく再利用される用途を見つけて、永く長く継承されてほしい。

私の個人的なわがままかもしれませんが、この本を読むと、大切な原料・材料の枯渇している状況、将来への不安がよく理解でき、伝統を守る大切さに改めて気づけると思います。

科学の進歩、技術の発展は、良い面ももちろんたくさんありますが、罪深い面もまたいろいろあります。

お手軽になんでも入手できるのが当たり前という事態は「危険」だと、私は密かに警鐘を鳴らしています。

自然回帰は退行ではなく、正しいベクトルへ戻ることなのだと、この本が切々と説いてくれました。

年長者・ご先祖様を敬うという基本に立ち返って、古きよきものを大事に受け継いでいかねばと、心を新たにした次第です。