「羅針盤の針は夢に向け」モスバーガーを創った男の物語

以前、ブログで紹介した今野敏氏著「隠蔽捜査」の主人公・竜崎伸也は建前のない本音だけで生きている警察キャリアの《フィクション》でした。でも、このモスバーガーの創始者のお話は《ノンフィクション》。本音しかないという稀有な人物が存在するという事実に、まず驚かされました。

創業者・櫻田彗氏。モスバーガーのおいしさも店舗スタッフの親切さも、この櫻田氏の「愛」を理念とした経営精神から生まれたことが、この伝記を読むとよく分かります。

学生時代のある夕方、彼とモスバーガーに行った時のこと。作り置きをしないモスのやり方と、その美味しさは納得済みだったので、注文して2人で待っていました。ところが、私たちより後から注文した客も、商品を受け取ってどんどん退店。残ったのは彼と私だけ。

お店の方が気づき、やがて顔をひきつらせて私たちの方にやってきて問いかけました。

「お客様のご注文は○○と××と△△でございますか?」

「はい、その通りです」

「大変お待たせして申し訳ありません! 大至急お作りいたします!!!」

どうやら注文伝票が床に落ち、スルーされてしまっていたようでした。大車輪で厨房で働いている様子が伝わってきて、少し後にカウンターに呼ばれると、大きく膨らんだ紙袋が用意されていました。代金は注文した通りで大量のハンバーガーがお詫びとしてサービスされたのです。

さらに、店舗スタッフ全員(多分)が、店を出る私たち2人を出口にずらっと並んでお見送りしてくれました。いやあ、あれはかなり恥ずかしかった。。。

もう夜だったので、せっかくの出来立てのハンバーガーを無駄にしたくなかった私たちは友人を呼び、即席のバーガーパーティーとなりました。

正直に《良い》商品を提供する。お客様には真心をこめて接する。そんな言わば当たり前のことが、えてしてできてないことがあります。でもモス創業者の櫻田彗氏はその精神を貫き通し、身を削って実践され、60歳のこれからという時に、惜しくも亡くなられました。残念なことです。

この本を知ったキッカケは隆祥館書店のHPでした。二村店長は魅力的な実在の人物が書かれた本がお好きなようですね。私も大好きです♡ (サントリーのお二人の物語も隆祥館書店のHPで知りました)

事実は小説より感動的! オススメです。