純文学の書き手って、なんて抒情的に、なんて幻想的に、オソロシイ世の中を示唆する物語を紡いでくださるのでしょう。
秘密警察による記憶狩りや消滅という、ありふれた(?)言葉が実は、民衆から自由を奪い、統制下に陥れるカギ。
解説によると、この小説はナチスのユダヤ人狩りが端を発しているらしいのですが、充分に今の世の中を見通しています。
1994年に書かれた作品ですが、東日本の311(津波)も予測させるし、今後分断が進みそうなトランプ政権となるアメリカ、SNSの情報操作を想像せずにはいられない兵庫県知事選挙と、先行きが暗い(と私は感じていますが)現実で、自分を平静に保つ術を持つことの大切さを訴えかけているようです。
オーウエルが怖くて読めない方、こちらのソフトな表現で、混沌となりそうな世の中を渡る処世術を、ぜひ自分なりに考えてみてください。