厚さ5cmの長編 チーム・オベリベリ

辞書か百科事典かと見紛う厚さのチーム・オベリベリ

本を借りる時、2段組みだったり上下巻だったりすると、ちょっと身構えてしまいます。果たしてこの本は面白いだろうか、最後まで飽きることなく読み進むことができるだろうか。

この本を借りる時も少し悩みました。図書館の書棚の中でひときわ目立つ幅広の背表紙。値段は2300円税別。なぜ2段組みにしなかったのか、上下巻に分けなかったのか。本も作る人の戦略があるのでしょうね。いろんな考えが頭をよぎりましたが、林真理子さんの推薦があったので、とにかく読んでみようと、借り出すことにしました。

乃南アサさんの作品は、直木賞受賞作の「凍える牙」は読みましたが、他は全く目を通していません。この「チーム・オベリベリ」は著者が初めて挑んだ長編リアル・フィクションだそうですが、私の印象を一言で言うと「重くない」でした。

北海道の原野を開拓する実在の人物をもとにしたストーリーなら、例えば篠田節子さんだと、さぞかしヘヴィなものに仕上がったでしょう。でも、乃南さんの筆致はなんというか「軽やか」。主人公が知的で前向きな女性というのが良かったのでしょう。過酷な状況なのに、あまり深刻な気分にならずに読めました。

晩成社や渡辺勝、鈴木銃太郎、依田勉三など、私が今まで全く知らなかった帯広の開拓史を知る導入としては、丁度良いボリュームと肩の凝らないストーリー展開。歴史のお勉強をしながら物語を楽しめる、一冊で二度おいしい本と言えるでしょうか。

少し時間に余裕がある時に、「本を読んだぞぉ」という満足感を味わうにはうってつけの本です。現在の北海道の開かれた様子に、深々と頭を下げたくなりました。