「ラインの河辺」古い本ですが犬養道子女史の名品です。

犬養道子さん。五一五事件の犬養毅のお孫さんで、国際的に活躍された才媛です。多くの著作を残されており、ドイツへの造詣も深かった方。この「ラインの河辺」は1970年代に書かれた本ですが、今でも十分参考になる名著です。

マイスターの仕事ぶりを始めとする「ドイツ人気質」について。堅牢なつくりのドイツの住居について。進歩的なものには慎重になる「ドイツ的商品選び」について。

あるいは翻って日本人の特徴は? 曰く、過保護な国民(例えば駅のアナウンスの過剰さ)であるとか、大げさな包装文化(ドイツにいると「箱」がたまることはない)とか、「下の者」は「上の判断」に「批判がましくあってはならない」とか。

随分昔にドイツの住居について視察に出かけているのに、肝心のキッチンの使いやすさや窓の構造などを正しく見分ける女性の視点がなかった(つまり男性しかいなかった)ため、せっかくの技術を導入せず、いたずらに《経済重視》の華美な装飾ばかり取り入れてしまった、という指摘には、正直がっかりしました。

また、《まだ十分使えるけれどうちには要らない。お金に換える気はそれほどないが、棄てるにはもったいない》ものを効率的に交換する会が定期的にある、など。

日本のお中元・お歳暮の文化を全く否定するわけではありませんが、過剰包装(立派な箱を含み)や意に沿わない贈り物を受け取っても無駄になってしまう残念な風習、という感が否めないのは事実です。

ドイツの良さは、実際に住んだ時に体験済みなので、犬養女史が在独された時代からずっと続いている、という記述を読み返すと「ニッポンもがんばれよ~」と言いたくなりますね。

今日(2022.1.17)の朝日新聞には多和田葉子さんのベルリン通信が折しも掲載されていました。メルケルからショルツに首相が変わり、新しいドイツの様相が垣間見える内容です。

なかなかドイツの情報をお伝えできずにいますが、今なおレトロなドイツがその伝統を守っているようで、安心することができました。