冒頭に SMAP と V6 の解散劇を題材に出すあたり、椎名美智教授、サービス精神旺盛な方とお見受けします。
2016年に SMAP が「解散させていただくことになりました」というファックスをマスコミ関係者に送ったという事実と、V6 のホームページには「僕たち V6 は、2021年11月1日をもちまして、解散します」と発表されたというコントラストが、この《させていただく》という言葉のビミョーなニュアンスをクリアに説明するのにふさわしいと判断されたのでしょう。
私は昨今のネット社会が、誰からも【絶対に】悪く思われない表現を用いることに苦心させ、結果生まれた現象が、現代の《させていただく》オンパレード、と想像しています。ちょっとしたニュアンスの受け取り方の齟齬や誤解で、大炎上ということがありえる。オソロシイ世の中ですね。この私のブログにも、意味を取り違えられる分かりにくい表現がないかドキドキしながら、記事を公開する度にリアクションを待っていますが、今までのところ平穏無事な状況です。
《させていただく》はとても使い勝手のいい表現です。ただ、あまりに頻繁に至る所に使われている現状は「もうちょっと考えて、他の表現を使ったら?」とか「そこまでへりくだらないで、もうちょっと自信をもった言葉遣いをすればいいのに」と感じさせられることしきりです。
日本語の敬語表現は難しいと、特に外国人に日本語を教える時、痛感します。丁寧に言ったつもりが慇懃無礼と取られ、激怒される、なんてこともあります。事実、コールセンターで現在、3回目の接種の予約取得に狂奔しているシニアの方々は、死活問題なのか必死の声でお電話をくださる方もおり、ちょっと言い方を間違うと怒鳴られることもままあります。いやあ、冷や汗ものですね。
私は《させていただく》の氾濫には懐疑的ですが、ネットが世の中心とも言える現代社会では、やむを得ない状況なのかもしれません。
言語学の教授による解釈・解説がとてもわかりやすい角川新書で、少しご自分の言葉遣いを振り返ってみるのも一興かと思います。