村上春樹の「猫を棄てる」から日本語を考える

猫を棄てる 村上春樹著

「猫を棄てる」という村上春樹氏の作品は、本が小ぶりで、文字が大きく、行間が広い。おまけにイラストがところどころにあるので、あっという間に読めてしまいます。

「父親について語るとき」という副題がついていますが、氏がお父様について書かれたエッセイです。戦争の話がメインテーマと言えるでしょうか。

話自体は淡々と読めるのですが、私はタイトルの”すてる”が「捨てる」ではなく「棄てる」となっているのが気になってしかたありませんでした。”棄”という字からは「死体遺棄」という四字熟語が連想され、どうもおどろおどろしい雰囲気が漂うのです。私だけでしょうか?

日本語を外国人留学生に教えていると、普段思いもつかない質問が出されることがあります。

例えば、天然と自然はどう違うのか、どう使い分けるのか? あるいは、想像とイメージは単なる日本語と英語の違いなのに、なぜ使い方が違うのか? 実力と能力にはどのような違いがあるのか? などなど。

日頃から言葉に敏感な方は、きっと「なぜ?」「どうして?」と不思議に思って考えているのでしょう。これらの疑問に答えるサイトがちゃんと存在しました。私は辞書で天然を引くと「自然なこと」、自然を引くと「天然なこと」と書かれているのを見てずっこけてしまったのですが。

ちなみに捨てると棄てるはあまり違いがなく、棄は常用外との説明でした。

世にハルキストは大勢存在しますが、私は単なるミーハーで、流行っているから村上春樹氏の本は読んでおこうという、モラルの低い読者です💦 今まで読んだ中で一番のお気に入りは「ノルウェイの森」で、中でも出だしに

Auf Wiedersehen(アウフ ヴィーダーゼーエン また会いましょう)

というドイツ語が出てくるのが特に気に入っています。リリカルなストーリーももちろん好きなのですが、心理学や精神医学を勉強してから読むと、登場人物は神経症ばかりだなあ、と、妙な見方をするようになってしまいました。

「猫を棄てる」は繰り返しますが、すぐに読めます。長旅のお伴には別の本をおすすめいたします。