農業の大切さを身をもって書かれた「ザマミロ! 農は永遠なりだ」

山下惣一さんという、偉大な農民であり小説家の存在を知ったのは、天声人語による訃報のようなコラムからでした。今月10日に肺癌で逝去されたとのこと。生前にお会いできなかったのが、心から悔やまれます。

タイトルも勢いのある文字も、乱暴なイメージで、本書の文体も「オレ」という一人称を使う、少し破天荒な感覚の文章。でも、ご意見は至極まっとうな、地に足のついたものばかり。

農業を蔑ろにし、食品を輸入に頼るようになったツケが、私たちの生活をじわじわ追い詰めてくる怖い未来を、嚙み砕いた言葉で諭してくださっています。

豪快なお人柄がしのばれます。お酒とタバコをこよなく愛された方のようで、食生活は健康食に満ち溢れていたものの、ニコチンの毒性には勝てなかったみたいですね。

農政や農製品の輸出入に関する分析は、きちんとデータベースをもとにされており、おみそれするしかないほど、お見事です。

「家の光」というJAの雑誌に連載されたコラムをまとめたものが、この「ザマミロ! 農は永遠なりだ」。爆笑したり、背筋が寒くなったり、感情の起伏が激しくなる、刺激的な1冊でした。

男ばかりだった農協の総代総会に女性が参画するようになった下りは、森元首相に200%拡大コピーして送りつけてやりたいですね。男性の意見が建設的になり、ヤケを言わなくなった、とあります。嗤えます。

たくさんのご著書を残されていらっしゃるので、遅ればせながら拝読したいと存じます。

享年86歳。ご冥福をお祈りします。