日独 職業観 比較 「杜氏とパン職人」

図書館の新刊コーナーでタイトルに惹かれて借り、内容を見てすっかり惚れてしまった本がこれ ↓ 

我ながら《私らしい》と思ってしまいます。そう、即ご購入です。

豊富なカラー写真においしそうなお酒の紹介。日本酒を選び、楽しみながら、全国を巡る。完全バイブルというタイトルは、決して大げさではありません。実に魅力的な内容です。

日本酒の魅力に引かれ、杜氏になった外国人の紹介記事もあります。杜氏と聞くと私は 職人 ザ・マイスター というイメージが強いのですが、この本で取り上げられているイギリス人杜氏は、型破りな発想で、新しい日本酒の可能性を追求していて、ぜひお会いしたい・お酒も味わいたい、と思わせる人物です。

ところで、日本とドイツの教育システムは、かなり違っていて、小学校にあたる Grundschule グルンド シューレ・基礎学校に4年通うと、もう将来の職業選択がスタートします。大学に進学し、医師や弁護士などの職業に将来就きたいなら「ギムナジウム」。職人や事務職を目指す、勉強が苦手な子供たちは「レアルシューレ」か「ハウプトシューレ」に進みます。マイスターを目指す職人気質なタイプもいれば、ブルーカラーやホワイトカラーと呼ばれる、工場のラインで働く人、オフィスでデスクワークをする人、などに分かれるのです。

日本に比べ、ドイツは大学進学率が低く、ギムナジウムで勉強しないと大学に進学するのは非常に難しくなります。

日本人は、例えば学校の教師だった人が、モンスターペアレンツに忙殺され教育の根幹を見失い、ドイツに渡って弟子入りし、パン職人になった。なんてケースがありえますが、ドイツ人にはよっぽどのことがない限り、ありえない転職だそうです。詳しくは Young Germany のサンドラさんのブログをご参照ください。

私が以前読んだ本には、HONDA の工場のユニフォームの色で、ドイツにホンダの工場を作って現地採用した際、大いにもめたということが書いてあったと記憶します。確かホンダでは汚れを厳しく管理するため、白い作業着を全員に着用させているそうですが、ドイツでは白のつなぎはペンキ塗りなどの、彼の国では下層とみなされている職種の人が着る制服なので、工場勤務をする作業員が最初、かなりの抵抗を示したとか。

私は五十数年の人生で、かなり転職をしたクチで、そのいろんな経験が、現在の《語学講師》という職業に大いに役立っていると思っています。一つの職種、一つの会社や組織で一生を終える多くの人たちには尊敬の念を抱きますが、羨望はしませんね。世の中、いろんな仕事があり、いろんな人がいることを、身をもって体験し、視野が広がったと自負しています。大企業や大きな組織にとって、私のような人間は、型破りで迷惑な存在となるのでしょうが。

大それたことを書いてしまったような気もしますが、これから職業はどんどん細分化し、AI にとって代わられ、人間しかできない仕事を見つけていくことが不可欠になっていくと思います。大谷翔平さんではないですが、二刀流・三刀流はあたりまえになるのでは? スペシャリストよりジェネラリスト、日本人が得意な方向ではないでしょうか。