翻訳には、実は日本語のボキャブラリーが山ほど必要って、ご存じでしたか? 言語を忠実に訳すというより、日本語らしい表現にする方が大切。しかも、原作の背景やメインとされる読者層に一番届く言葉を逐一選びながら。
本職は翻訳家でいらっしゃる岸本佐知子さん。その膨大なボキャブラリーが、ほとばしるように、みなぎっているエッセイ「死ぬまでに行きたい海」。いやあ、楽しかった。読んでいて、何度も何度も大笑いしながら、言葉を紡ぐ魔術師的な文章力に、舌を巻きました。
岸本佐知子さんに興味を持ったのは、実は私の大好きな《エーベルバッハ少佐》のファンであるという事実を知ったからです。(青池保子先生のコミック「エロイカより愛をこめて」に出てくる人気のドイツ人キャラクター)
私と趣味・志向が似ているかも! 少佐好きということは、男性の理想像なども多分似ていて、お話させていただいたら、きっと意気投合、盛り上がるに違いない! と、勝手に妄想が広がっていきました。
どのエピソードも味わい深くて、甲乙つけがたいのですが、中でも「上海」は秀逸です。どっかんどっかん爆笑できるエッセイです。
最近、笑っていないなあ、という方は、ぜひお手に取ってみてくださいませ。
それにしても、ぜひ一度お目にかかりたいものです。