「五体不満足」がベストセラーになった当時、私は日本にいませんでした。乙武さんが各局のテレビや各種メディアに引っ張りだこになっていたことも、そのため存じ上げず、ミリオンセラーを記録したご著書は、かなり遅れて拝読しました。
衝撃でした。うちのめされました。
ドイツ語版が出ていると知った私は、本好きのドイツ人の友人2人に、その翻訳版「Leben ist Freude」(直訳すると、人生は喜びだ)をクリスマスプレゼントとして渡しました。写真をみた2人が、「これは特撮じゃないの?」と驚いていたのが、今でも印象に残っています。
日本語の”五体不満足”という感覚をドイツ語に翻訳するのは、かなり難しいとは思いますが、それにしても「人生は喜びだ」とは。。。もう少しうまい訳ができなかったのかと残念です。
私の調べた限りでは、ドイツ語版は単行本のみで、Taschenbuch タッシェンブッフ・文庫本にはなっていないので、それほど売り上げは伸びなかったということでしょう。タイトルがもっと工夫されれば、文庫化されて売れ行きにも拍車をかけられたのでは、と悔しさが募ります。かと言って、私がもっといい訳ができるわけではないのですが。
英語版は「No One’s Perfect」で、こちらはペーパーバックが出ていました。
さて、前置きが長くなりました。「四肢奮迅」です。感動モノです。何度も涙が止まらなくなりました。五体満足の人間には想像を絶する苦労があったものと思われます。乙武さんのご著書に接すると、いつも、「恵まれた身体であることに感謝」と居住まいを正してしまいます。困難にぶつかっても前向きになれる、カンフル剤効果があります。
月並みな言葉しか出てこなくて歯がゆいのですが、不倫やら離婚騒動で徹底的にたたかれてしまったけれど、それでも私は乙武さんを強く支持します。
ごく普通のこと、当たり前のことが「できない」。
前妻の方が訴えていましたが、乙武さん特有のポジティブさで、いろんなことができるように思われているけれど、実際は介助がなければ、たくさんの不自由があるはずです。乙武さんご自身は、おもねられるのがお嫌かもしれませんが、現在もマネージャーの北村さんの存在あってこそのご活躍と、ご本人が一番自覚されていることでしょう。表面的なことだけを見て非難するのはたやすいことですが、あまりに想像力が欠如していると思います。それだけ乙武さんに対して抱いていたイメージのプラス感が強かったのでしょうが。
何度も話が脱線してしまっていますが、この感動的なドキュメントは、この「四肢奮迅」を読んでいただけば、百聞は一読にしかず、ですので。
40年前、電話は持ち運び不可能でした。今はパソコンの機能までついて、自由に持ち歩ける”スマートフォン”という姿です。乙武さんは五体不満足の中で、「足があったら、サッカーができるんだよ」と子どもの頃に夢を語っていました。義足や義手のテクニックが向上すれば、バイオニックジェミーのように超人的な脚力や超高速のキーボード操作などを身につけたサイボーグのように乙武さんが変身できるかもしれませんね。40年は長いですが、20年あれば、かなり技術開発も進むのでは?
まあ、ちょっと飛躍しすぎた夢ですが、乙武義足プロジェクトの今後ますますの発展を心から楽しみにしています。「四肢奮迅」の続編を読むのが今から待ち遠しいです。でもお身体はくれぐれもご自愛くださいね。