半沢直樹シリーズの最新作「アルルカンと道化師」を読んで

半沢直樹 アルルカンと道化師 池井戸潤著

さすがは池井戸潤氏。半沢直樹の存在感を不動のものに仕上げた勧善懲悪系ミステリーです。この本については敢えて触れません。期待を裏切らない良作と申し上げておきましょう。

少し私の弟たちのことを綴ってみます。

私には2人の弟がいます。3歳下の弟には子どもの頃、どちらかというと冷たくしました。独占していた母の愛を奪った略奪者(もちろん当時そんなボキャブラはなかったですが)と映っていたのでしょう。

6歳下の弟には、姉としての愛情が芽生えたのか、可愛がってあげた記憶があります。いっちょまえに《本の読み聞かせ》なんぞをしてやったり。その影響か、彼は私を上回る読書好きに成長しました。中学生の頃には、司書の方が「図書館に入れる本を推薦してほしいから、一緒に書店まで連れて行きたい」と母に連絡がきて、びっくりしたこともあった、と後に母が語ってくれたほどです。

一方、上の弟は無類の活字嫌い。本を読む根性をこれっぽっちも持ち合わせていませんでした。

そんな2人に、こんなエピソードがあります。

兄が学校から課題図書を読んでストーリーと感想について書くという宿題をもらってきました。読み始めましたが、やはり面倒くさい。それで一計を図り、弟に訊いたのです。「おまえ、これ読んだ」「うん」「どういう話?」「主人公がああなって、こうなって、最期はこうなる」「ふ~ん、わかった。ありがとう」

結局、兄はほとんど読みもせず、弟の話だけで宿題を完成させたのです。

そんな兄が、最近具合が悪くなり、入院を強いられました。病院の中ですることもなく、少しは本を読もうと、考えを改めたとか。

父の介護云々の時、この兄が我が家に来てくれて、大いに助かったのですが、その際、私の本棚に”半沢直樹シリーズ”が3冊そろっているのを見つけました。ドラマでハマったので、ぜひ原作を読みたい、と言います。空いている時間に夢中になって読んでいた彼は、シリーズ4の「銀翼のイカロス」も読みたくなってしまいました。母も私も図書館で借りて読んだので、例のごとく文庫本がお買い得コーナーに並ぶまで購入する気はありません。

で、この兄貴、古書店を探してもなかったので、新刊の文庫本を買ってきたのです。あの本嫌いの弟が、わざわざ自分で本を買って読むなんて。。。感慨深いものがありました。

というわけで、半沢直樹シリーズには、密かに感謝しております。原作もドラマも素晴らしい出来で、私もどちらにもハマりました。

「銀翼のイカロス」では牧野副頭取の自殺が鍵になっていて、重厚な印象を与えていましたが、池井戸氏はこの話を何をヒントに書かれたのか、私には大変興味があります。ドラマでも重要な意味を持たせていましたが、私はそのドラマの作りこみ方から、これは赤木俊夫さんへのオマージュではないか、と勘繰っています。あくまでも勝手な推測ですが。

今日は新聞に、ある本が映画化した、という広告が載っていました。次はこれを借りにいこうと思っています。願わくば、原作が良いものであり、映画が素晴らしい作品となって、多くの方が読書をするきっかけになってくれますように。