タイトルを見た時、カズオ・イシグロの絵本が出た?!と無邪気に喜んだ私が莫迦でした。人工知能(AI )を搭載した少女型ロボット・クララ(文中ではAFと表現されていて、Fはどうやら《フレンド》を意味するようです)と病弱のジョジーとの間の友情物語。と、簡単に片づけられるオハナシではないのです。ノーベル文学賞を獲るお方って、相当複雑な思考回路をお持ちなのですね。あたりまえかもしれませんが。
ネタバレになるので詳しい話は書きませんが、暗に環境破壊に対する見解が垣間見えるディテールも盛り込まれ、ポエム的なタイトルに相反して、その内容はかなりディープです。
以前「わたしを離さないで」を読んだ時は、臓器提供のために生まれたクローンという着想にビックリマークが頭の中を跳ね回りました。小説だからこそ創造できる世界で、人道的なことをあれこれ言う輩がこれを読んだら、フィクションでも表現の自由があると言えども、許容範囲を超えている、と怒鳴りこんでいきそうな気がします。
大江健三郎先生の作品も難解ですね。「治療塔」も SF ではあるのですが、選ばれた人が大船団で宇宙へ行き、残された者たちが荒廃した地球で苦労して・・・人間の階級についてと環境汚染への警鐘という二段構えの重厚なサイエンスフィクション? 読むのは正直しんどかったです。
《ふやけた脳みそに時々は喝を入れよう》
というストイックな発想と
《人間が地上に存在する意義を考えよう》
という哲学的な思想をもって、ノーベル文学賞作家の作品には「挑むべし」と改めて実感した作品群でした。
浅学の私としては、心と時間に余裕がある時にお読みいただくことをおすすめいたします。