この小説を読みながら、その暴力の描写に圧倒されながら、私はウーマンラッシュアワーの村本大輔さんを思い出していました。
この突拍子もないリンクに「へ?」と思われるのは当然です。順を追って書いていきましょう。
「テスカポリトカ」直木賞作品では異色の、暴力的な表現満載のエンタメ大作です。描かれている闇市場・麻薬や臓器売買など、この世に密かに存在はしているけれど、大半の平和な人々は知らない世界。その、普通の人々が遠ざけている存在を圧巻の筆致で突き付けてきた佐藤究氏。ただただ「おそれいりました」とひれ伏すように読了しました。
昔は夏木静子でさえ怖くて読めなかった臆病者だった私が、かなりワクワクしながら「テスカポリトカ」を読み進めたのは、私が強くなったからか、鈍感になったからなのか。それはまあ、どうでもいいことですが。グロイ表現も盛沢山なのに、不思議と嫌悪感は抱きませんでしたね。
実は最近、吉本芸人が三重県で新喜劇とバラエティーを披露してくださり、そのチケットを入手していた私は、このコロナ禍の笑いが減っている中で、久々にお腹を抱えて笑うことができたのです。
様々な芸人さんが《三重ネタ》を盛り込んでサービス精神旺盛に笑わせてくれて、ソーシャルディスタンスで半数の入場者でしたが、皆、楽しいひとときを過ごせました。
私が中でもお気に入りだったネタはウーマンラッシュアワーの村本大輔さんのブラックユーモアでした。時事ネタというか、社会の暗部と言ってしまって良いのか、被災地・原発・朝鮮学校に基地問題など。分かってはいるけれど、いかんともしかねて傍観している大多数の人に「こら、ちゃんと注目してやれよ」と投げかけてくる。しかもウィットという皆が消化しやすい皮でくるんで。
村本氏、とても頭の良い、また問題意識の強い、素晴らしい芸人さんだなと、今更ながら感服いたしました。
本のネタからずいぶん逸れてしまいました。
世の中にはたくさんの問題があって、その解決のためにいろんな形でかかわっていくことができる。《意識高い系》という言葉がありますが、自分自身、やれることをやって、社会に少しでも貢献することを心がけよう。筆者の意図とは全然違うでしょうが、そんな読後感を持った、面白い1冊でした。