今年の干支・牛の声は日本語では「モーモー」ですよね。ドイツの牛は「ムームー」と鳴きます。いや、ドイツ人にはそう聞こえるようです。「モー」と「ムー」は母音の違いですが、子音が違う場合もあります。例えば犬。日本では「ワンワン」ですが、ドイツでは「ヴァウヴァウ」となります。
面白いのは、ドイツ語では動物の鳴き声がほとんど《動詞》になっていること。muhen ムーエンは「牛がムーと鳴く」という意味の動詞。miauen ミアウエンは猫。犬はちょっと変化球で bellen ベレン。
さて、食べること。ドイツ人が子供に「ハムハム?」と尋ねているのを見たことがあります。これは「おなかすいた?」「何か食べたい?」にあたるオノマトペなのだそうです。日本語の語感で言えば「もぐもぐ?」みたいなもんでしょうか。
ちなみに、”ハム”はドイツ語では Schinken シンケンと言い、お肉屋さんにいろんな種類のハム・ソーセージが並ぶ様子は圧巻です。
食卓を豊かにする言葉。日本人は「食」をとても大事に考える民族なので、食べることに関するボキャブラリーがあらゆる意味で豊富です。そのことを気づかせてくれたのが、この「食べる日本語」。
最近《ひもじい》という言葉はあまり耳にしませんが「ひもじいときのまずい物なし」は真理をついていますね。「空腹は最良のスパイス」と同意義です。
「ほっぺたが落ちる」とは、とってもオイシイ~~、という日本語らしい表現ですが、中国人は「眉毛が抜けるほどおいしい」と言い、ベトナムでは「死んでしまいたいほどおいしい」、韓国では「隣で食事相手が死んでいても気づかないほどおいしい」となんだか物騒な比喩を用いるそうです。
古典から文豪、今どきの人気作家にいたるまで、いろんな文例をあげながら、食に関する日本語を、興味深い視点で書いた早川文代さん。日経新聞に連載されたコラムをまとめたものだそうです。おいしくてためになる1冊でした。