儚いもの好きは日本人の性か?

父・太宰治と母・太田静子

春の象徴・桜の花や夏の風物詩・花火など、日本人は「パッと咲いてパッと散る」儚いものが好きな民族のような気がします。私も両方大好き。

あるいは若くして美しいまま亡くなったジェームス・ディーンや夏目雅子が人気なのも、同じような理由なのでしょうか。

太宰治人気も根強いものがありますね。桜桃忌には今でも多くのファンが集まるようですし、「斜陽」はいまだにたくさんの人に読まれています。

林真理子さんの YouTube に触発されて、太田治子さんの「明るい方へ」を読みました。読みながら急に、この事実(?)が映画でどこまで再現されているかを知りたくなり、「人間失格 太宰治と3人の女たち」の DVD をレンタルして観てみました。

蜷川実花さんが監督されているだけあって、ビジュアルの鮮烈な美しさに目を奪われました。小栗旬さんのキザな演技が板についています。宮沢りえさんも二階堂ふみさんももちろんお美しいのですが、沢尻エリカさんの出演作品は軒並み TV 放映 NG なので、この DVD は価値があるように思います。彼女の奔放さ、艶やかな美しさがよく現されていました。

肺結核が悪化し、39歳で愛人と入水自殺。儚いもの好きの日本人には、おいしいネタというか、なんというか。

でも、夢をぶっ壊すような、この太田治子さんによる、父・太宰治と母・太田静子について綴った「明るい方へ」。あの名作「斜陽」のオリジナルは治子さんの母によるものであったと、克明に書かれています。

自分の作品をどんな形であれ世に出したい、という欲求は誰にでもあるのかもしれません。太田静子さんも、自分が書いた日記をもとに太宰治が名作を産み、広く世間の人々に読まれたという事実で、満足されているふしがあります。

でも、婚外子として生まれた娘の治子さんは、真実を知らしめたかったのでしょうか。この「明るい方へ」は太宰治ファンにとっては痛恨の本となりえます。

真実が歪められることは、往々にしてあること。でも一石を投じることには、大きな意味があるでしょう。

冷静な娘の目線が光る、興味深い1冊です。