純文学のミステリー?「つまらない住宅地のすべての家」津村記久子著

この本をある方からご紹介いただいてから読むのに、半年近くかかってしまいました。津村記久子さんって人気の芥川賞作家なんですね。存じ上げず失礼しました。

ビンボーな身の上、例のごとく図書館に予約を入れたら、ものすごい数の予約が既にあり、随分待たされてしまいました。

純文学に抵抗がある私に理解できるんだろうかと半信半疑で読み進めましたが、エンタメ小説以上に深い伏線があり、とても面白い本でした。

平凡で平和な住宅地に突如舞い込んだ「脱獄女囚が向かっている」という知らせ。エンタメミステリーの緊迫感とは違って、淡々とした描写なのに、なんだか先がすごく気になる。巧い構成です。文の職人というか、匠のワザ的なものを感じました。

単に私の無知・無教養による見落としかもしれないのですが、もし津村記久子さんという作家をマークしていなかった方は、この「つまらない住宅地のすべての家」を読んでみてください。登場人物のなにげないやりとりや行動の中に思いやりや優しさがつまっていて、読後感はとても温かい。読書の秋におすすめの名品です。