警察小説の旗手・佐々木譲による長編「抵抗都市」

佐々木譲氏の作品は、直木賞を取られた「廃墟に乞う」を読んでいらいです。あまり好みの作風でなかったので、その後はずっと手に取ったことがなかったのですが、新聞広告で取り上げられているのを見て、この大作に挑んでみました。

淡々とした文体は佐々木氏の持ち味というか。ロシアという、私の感覚では一種「不気味」(プーチン大統領に関するいろんな報道からの憶測ですが)な印象を持つ国による統治下の東京が舞台。スパイが跋扈し、誰を信じていいのか分からないスリルが、じわじわとした緊張感を与え、飽きずに読了しました。

複雑なプロットも、氏の明晰な頭脳が主人公・新堂にうまく語らせ行動させることで、明解に頭に入ってきました。国を揺るがす陰謀を企む謎の組織。殺された男の正体は? 次々に湧き上がってくる疑問に翻弄される感覚が、淡々とした文章のおかげか、不快ではなく、まるで自分のレベルに合わせて順番にステップアップしていけるように仕組まれた教材か何かのように、焦らずスムーズに結論にたどり着けました。

著者が「今の日本への問題意識を示すために、この舞台を選んだ」と語る、圧巻の歴史改変警察小説。はまります。