西加奈子さんのエッセイにして闘病記。迫真の文章が胸に刺さります。

乳がんと聞くと、市川海老蔵(今は団十郎ですね)の妻にしてジャーナリストの故・小林麻央さんの壮絶な記録が蘇ります。あの後、乳がん検診希望者が病院・婦人科などに殺到していた様子は、忘れることができません。

西加奈子さんは、海外で癌告知を受け、治療し、キャンサーフリーになった、お見事な「がんサバイバー」。

完全寛解、あるいは完全治癒。いずれにしても闘病され、しかも克明に病状・治療内容(服薬を含め)を書いてくださったことは、作家という「文章で書いておきたい欲求」のなせる業ではあるにしろ、とても勇気のある行為で、読者にとっては物凄くありがたい記録です。

バンクーバーという異国の地。母語で病状を医師や看護師に訴えられない苦労・もどかしさ。日本とは違うシステム・ケア。

そんな「たいへんさ」てんこ盛り状況の中で、坊主頭になった姿がカッコよかったり、乳房を切除した後がとてもキレイだったり。

そんな風に前向きにとらえられる思考、そして支えてくださる家族・友人・もちろん医療関係者皆さんこぞって素敵な方に恵まれ、グッドライフの見本のようです。

蚊に刺されてちょっと痒いだけで大騒ぎする私なんぞ、放射線治療の壮絶な苦しさは、もう想像しただけで降参。逃げます。受けません。私は癌と共生し、共に心中する道を選ぶと思います。

すみません。もう人生の折り返しを過ぎてかなりになるので、シンドイのからはできるだけ逃げて生きたいと考えている臆病者です。

西加奈子さん、無事にキャンサーフリーとなられて、本当に良かったです。そして素敵な本を書いてくださり、心より御礼申し上げます。