巧いなあ。沁みるなあ。読みながら、何度唸ったことか。
泣かされました。
読み進めながら、この読書が永遠に続けばいいとさえ思えるほど、至福の時間でした。
今、ジョージ・ウィンストンのピアノの調べ「Longing/Love」を聞きながら、余韻に浸っているところです。
塩田武士さん。この小説の中の写実絵画をそのまま文章で体現なさっているような、本当に美術工芸品のような緻密なストーリーを著されます。
「罪の声」の二番煎じかと揶揄されるむきもあるようですが、いやいや、それはこの物語の奥深さを理解できない、熟考しない今どきの人種の浅はかな批評です。
本物を追求し、存在の大事さを説く。
ひょっとして塩田さんは哲学者ですか?
タイトルと本の装丁が、なんというか《惜しい》と思ってしまっています。私も良さを理解できない人種なのかもしれませんが。