長谷川和夫先生。「痴呆症」とかつて呼ばれていた症状を「認知症」に改名させ、また、その認知症の診断をする検査を考案された、権威ある専門医です。
そんな立派な先生が、自ら《認知症になった》ことをカミングアウトされ、その実体験を分かりやすく書き記したのが本書「ボクはやっと認知症のことがわかった」であります。
《認知症になったら終わり》というイメージが世の中には浸透していますが、実際は「違う」ということを、とても丁寧に説いてくださっています。
昨年父を看取るまで、約5年、認知症の親をつぶさに観察し、接してきましたが、この本を読んで、随分可哀相な仕打ちを父親にしてしまったなあ、と猛省しました。
私自身、将来、認知症になることへの恐怖はあります。自分が周囲に迷惑をかけることへの不安以上に、人間扱いされなくなることへの不安の方が大きいです。
だからこそ、認知症という症状に対する世間の常識を改めるためにも、長谷川先生のこの遺言とも言える本を、なるべく多くの方に読んでもらいたいと思います。
皆が、認知症患者を正しく理解し、また自分自身がゆるやかに認知症になっていく現実を受け止められるようになれば、これからの高齢化社会も、少しは問題が軽減するのではないかと考えます。
「認知症の本質は、暮らしの障害である」
この金言をしっかり受け止め、自分自身の老化に正面から向き合おうと思います。少しずつ衰えていく、不安ではありますが、避けては通れません。今からしっかり準備して、来るべき時に備えます。気が早いですかねえ。