「その他の外国文学」の翻訳者 白水社編集部編

本屋さんや図書館で外国語に関する書籍のコーナーへ行くと、英語に関する本の多さに、イングリッシュの強さを今更ながら感じます。

世の中で外国語と言えば「英語」という固定観念の強い人が多いのは、厳然たる事実。そしてまた、国際舞台においても英語は世界共通の公用語という地位に揺るぎはありません。

でも、私は敢えて「ドイツ語」を選びました。仕事にする上で、競争相手が少ない、という不純な理由があるのは、正直否めません。ただ、ドイツ語は、まだメジャーな言語であるようです。

この「その他の外国文学」というくくり。なんだか”屈辱的”な気分を味わいそうな【他】という文字。そんな言語に携わっている方の本音を知りたいと思い、読んでみました。

皆さん、ものすごい苦労を経験なさっているのが、良くわかりました。辞書がない。もう、それを聞いただけで、深く同情申し上げます。私のドイツ語学習は独和・和独の辞書がしっかり完備し、ご丁寧な文法書も豊富に出版されていて、なんと恵まれた学習環境であることか。

それなのに、「この本の面白さを日本人に伝えたい」という熱意から、翻訳というコストパフォーマンスの悪いお仕事を黙々となさる方々。ご自分の好きな言語への飽くなき探求心。頭が下がります。

白水社は語学関連の書籍出版では定評があり、私も何冊かドイツ語の本に白水社出版のものがあります。

そんなオーソリティが、「どうだ」とばかりに紹介している《その他の外国文学》はヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語、の9言語。え、どこの国? とか、その文明はもう滅んだんじゃなかったっけ? とか、知的好奇心がマックスで刺激されます。

翻訳というお仕事の大変さや、文学へのこだわり、ちょっとした言語学の知識、などなど、とても盛沢山な内容です。9人分なので、一気読みしてもよし、1つずつ味わってもよし。自分のペースで楽しめます。

世の中にはいろんな仕事があるんだなあ、と感じるだけでも、大きなプラスになる、素敵な一冊です。