日本語は難しい言語なのか?

コールセンターで昨日ずっこけました。

「では、ご足労おかけしますが、またお電話いただけますでしょうか」

発言の主は外国人ではありません。日本人です。誰かが話しているのを聞きかじって、カッコイイと思ったのか、意味も確認せず使ったようです。ハズカシイ・・・

日本語教室を任されると、よく尋ねられるのは、

「日本語はやっぱり難しいんですかねえ」

という質問。これは我々日本人は世界でも難解な言語を操る優秀な人種である、と思いたい《マウンティング》が感じられます。

世界で発言力というか、影響力を持っているのは、やはり《欧米人》と言えるのでしょうか。英語やフランス語やドイツ語など、彼らが操る言葉と日本語では、文字も文法も語彙も全く異なります。共通点のないものを学ぶことは、足がかりがないので、どうしても難しく感じる。だから印欧語族系の言葉(ゲルマン語やスラブ語、ラテン語など)が母語の人達にとって、日本語は難解な言語なのは当然なのです。

角界を見ると、その一幕が分かりやすいかもしれません。琴欧州や把瑠都など東ヨーロッパからはるばる来られた力士諸氏(引退されましたが、このしこ名の方が覚えが良いと思うので)の日本語は、どうしてもぎこちない。

ところがモンゴルからやって来た朝青龍や白鳳の日本語はネイティブ顔負けの上手さ。これはモンゴル語も日本語も同じ文法と語彙だからです(文字は違いますが)。

中国人は「てにをは」が苦手ですが、これは中国語に助詞や接尾語にあたるものがほとんどないからです。

こんな風にそれぞれの国の言語の特徴を分かった上で外国人学習者たちに接すると、彼らの苦労がよく理解できます。

面白いのはやはり中国人でしょうか。漢字の産みの親である偉大な彼らにとって、日本語能力試験の N5(初心者レベル)が難しく、 N1(上級者レベル)が易しいのです。

かつては漢字使用国だった韓国が、ハングルという世界でも稀にみるハイレベルな文字を作り出したため、日本語学習にはビハインドになってしまいました。それでも韓国語と日本語は兄弟のような言葉同士なので、韓国人の日本語習得は速いです。

母語が何かによって、次に身につける言葉が易しいか難しいか、それぞれ違うということをご理解いただけたかと思います。

日本語は世界で一番難しい、という風に思い込んでいる方が多いようです。

確かに書き言葉は、ひらがな・カタカナ・漢字とタイプの違う文字を組み合わせて使うので、外国語として学ぶ方には、ひじょうに手強い言語と言えるでしょう。世界でも稀に見る現象(3種類もあるということ)かもしれません。

それにしても「ご足労」という言葉、前述の日本人スタッフは、どんな漢字なのか想像しなかったんでしょうかねぇ。