国民的大河小説「流転の海」。完成まで37年、全9巻4500ページ。文庫本で感動のフィナーレです。
今年の春には出るだろうと、新年から暇をみて、第1部から読みなおし始め、ちょうど第9部の「野の春」が出版される前日に、第8部を読み終えたタイミングの良さ。我ながら冴えてるなと自画自賛です。
宮本輝先生がご自分の両親、特に父君の豪快な生き様を小説仕立てで書きあげた超大作。どこまでが実話でどこからがフィクションなのか、想像力がいやがおうにも掻き立てられ、また、先生の他の作品の伏線も垣間見え、宮本ファンなら必携の9冊と言っても過言ではないでしょう。
宮本先生は芥川賞作家で、芥川賞の選考委員も務めていらっしゃいます。林真理子さんの週刊朝日の対談に出られた時のお茶目ぶりというか、正直さ(?)には爆笑してしまいました。
確か、「芥川賞の候補作品は読んで面白くないんだよ。林さんのやっている直木賞作品の方が読んでいてずっと面白い。ぜひ代わってくれよ」 とかなんとかおっしゃっていて、そんなこと、公表して大丈夫なのかと、林真理子さんがオロオロしていたような記憶があります。
流転の海シリーズの中には、ご自分にあたる人物ももちろん登場しており、その魅力的なキャラクターは、対談での破天荒ぶりを彷彿とさせます。
松坂熊吾、房江、伸仁。この3人の家族を中心に、数百人を超える人間模様と戦後という時代が、錦絵のように見事に描かれている、奇跡の大作。毎日芸術賞受賞作です。身体の弱かったという宮本先生が、完結まで描き切ってくださったことに感謝感謝です。