お医者さんの著作がなんだか前にもまして増えたような気がしますが、こちらも外科医が書いたおはなしです。
外科手術のリアルな描写が「さすが本物」と思わせます。命の選別や優しい嘘など、倫理的なテーマもさりげなく盛り込まれ、頑張る研修医への応援歌的なつくりになっています。
医学界ではドイツ語が今でも頻繁に使われている様子も伝わってきます。患者さんに聞かれるとまずい内容を隠語で話している感覚なのでしょうか。でも、こんな風に一般書籍に載せてしまったら、秘密の話がおおっぴらにできなくなるのにな。ま、いらぬお世話かもしれませんが。
かなり気になったのが、この主人公の雨野隆治君、分からないことをその場で質問しないんですね。私は「訊くは一瞬の恥、訊かぬは一生の恥」をモットーに、不明点はなるべくその場でクリアにするようにしています。時々、質問は、発言者が全て話した後でまとめてください、と怒られたりしていますが。
今、コロナ禍で、医療従事者が本当に大変な状況下にあり、頭が下がります。友人の子どもは3人のうち、一人が医者・一人が薬剤師で、その窮状を聞くにつけ、とても他人事とは思えません。
そんな困難な中で奮闘されている方々に、今以上の迷惑をかけないよう、そして少しでも応援できるよう、自分にできることは何かを考えたいと思います。
「泣くな研修医」は本当によく泣く外科医の卵のはなしで、一生懸命頑張っている姿に、けっこう自分も泣かされました。現役外科医にして、ベストセラー「医者の本音」の著者の小説デビュー作です。感動の医療ドラマにはまりたい方、ぜひお手にとってみてください。