不滅のミステリー 火車

火車 宮部みゆき著

私が今まで読んだ全ミステリーの中で《イチオシ》なのが、この「火車」。宮部みゆき氏の渾身の作にして、直木賞選考委員会の痛恨の作です。

弁護士の方への取材は言うに及ばず、地理の取材に髙村薫氏に同行を願い、大阪弁の会話のアドバイスを東野圭吾氏に乞うなど、豪華メンバーが勢ぞろいしています。

この作品が秀逸なのは、その斬新な犯人の書き方であるのに、直木賞選考委員の方々は、新しい書き方についていけない古い頭の持ち主が当時ほとんどであったがために、この名作は直木賞候補でありながら、受賞を逃しました。

救われたというか、本作品で山本周五郎賞を受賞はするのですが、宮部氏としては、きっと「直木賞選考委員の御大は皆オクレテル」とおかんむりだったのではないかと想像します。

宮部氏の受賞歴は、もう、作家としてはほとんど総ナメの感があります。直木賞も後にもちろん獲りました。また氏の器用さは目を見張るものがあり、ミステリーだけでなく、ファンタジーやSF、また現代ものだけでなく時代物も得意という、まさに《天が二物も三物も与えた》すぐれた書き手です。

この魅力ある作品・火車を未読の方がいらっしゃったら、私は言いたい。

「あなた、読書の楽しみを、まだ本当にはご存知ないですね」

多くの方が強く推薦している本作品。ミステリーの金字塔です。