大宅壮一先生の足跡をなぞってみました。

立派な装丁の本。昭和56年初版ですから、1981年ですね。定価が2500円と高価で、シリーズ本。ちょっとやすやすとは読むべきでないな、と襟を正して臨みました。

第二次世界大戦を戦地でリアルに体験されている方です。海外旅行がまだ解禁されていない昭和29年(1954年)に日本を発ち、世界中を一人で見聞しまくったそのバイタリティ・好奇心、そしてジャーナリストとしての冷静な視線・考察は、ただただもう「ははー--<m(__)m>」とひれ伏すしかない、威厳に満ちています。

大宅壮一文庫という遺産。大宅壮一ノンフィクション賞は今や多くのノンフィクションライターが渇望するタイトル。偉大な方のご著書にこれまで触れていなかった怠慢を、深く深く恥じ入っております。

内容は、とにかく読んでいただきたいので、ここでは割愛します。

週刊誌の仕事に携わったことがある者として、この本の《古さ》は違う興味を惹きました。活版印刷で作られたことがひじょ~~によくわかる誤植があったのです。

181ページの6行目の出だしが「一日に映えて・・・」7行目の頭は「朝つ浮かんでいる・・・」

一文字目がテレコになっているようですね。なんだか《人間らしい間違い》だなあと、コンピューターに支配されている現代社会への閉塞感が浮き彫りになるようでした。

知らない街を探索する。コロナ禍で抑圧されている旅行魂を刺激するには、あまりにも熱量の高い名作でした。