イギリス人のグルメって?

英国一家、日本を食べる マイケル・ブース著

在独中の話。デュッセルドルフーロンドン間の格安航空券のチラシをみつけた上司が、「フィオーラ、今は忙しくないから1週間の休暇をとって、イギリスに行ってらっしゃい」半ば命令でした。390ユーロの往復チケットは確かに魅力的で、宿泊代を浮かせようと、知り合い2人に連絡すると、どちらもOKの返事。急遽、イギリス旅行が決まったのでした。

知人宅に泊まったので、日本食を作ってくれと頼まれた私は、乞われるままに手巻き寿司・肉じゃがなどを作りました。オックスフォードに4泊したのですが、知人はドイツ人で、旦那様がインド人。日本食が珍しかったのか、とても喜んでくれました。

ロンドンにも2泊し、こちらはご夫婦どちらも土地の人。自慢のローストビーフではなく、完ペキなイタリアンパスタが出てきたのは、ご愛敬です。

まずいとさんざん聞かされていたイギリス料理は、ほとんど味わうことなく、ドイツに戻りました。イギリスに1週間も行ったら、痩せるよ、と言われていたのですが、体重は変わらず。

通の人によると、イギリスの料理は、素材はいいのだけれど、味付けがほとんどされていない。だからお醤油を持っていけば、問題ないです。という事前情報に従って持っていったお醤油は、肉じゃがとお寿司のたまりになりました。

911の同時多発テロの後、ロンドンでも小規模のテロによる爆発事件があり、イギリスへの出張に関するお触れが出たことがありました。

アルカイダはアメリカを敵視しているので、例えイギリス料理がまずいからと言って、マクドナルドやケンタッキーには行ってはいけない。おとなしくフィッシュ&チップスを食べておけ。

正確な文章は忘れましたが、だいたい上記と似たような内容でした。そう、イギリスにはフィッシュ&チップスしか食べられるものはない、みたいな文面でしたね。

さて、この「英国一家、日本を食べる」は、味音痴?なイギリス人による、日本のグルメ紀行文です。ローカルな焼き鳥屋やラーメンの話だけでなく、ビストロスマップを見学させてもらったり、相撲部屋でちゃんこ鍋を味わったり、果ては日本料理の重鎮と一見さんお断りの超一流店で、至福の料理を堪能したりと、なんとも羨ましい体験が満載です。

一人ではなく家族で、東京を中心に北海道から沖縄まで、正に日本を食べつくすといった趣のグルメレポート。イギリス人らしいひねたユーモアも随所にあり、最後まで飽きずに読めます。

和食がまだ世界遺産に登録される前、東京がミシュランでパリより星を多く獲得した後、の体験談。日本人の長寿の秘訣を解析したり、関東と関西の冷静な比較や、アイヌの話など、外国人ならではの視点は、時に「目からうろこ」になることも。知的なグルメ本です。